・「歌物語」の基礎知識(作品・成立年代・特徴)
・文学史対策のために覚えるポイント
を解説します!
こんにちは!
国語予備校講師のことのはです!
日本文学作品はたくさんありますが、大学入試問題で出題される作品や問題には偏りがあります。国語予備校講師が、過去問5年分以上分析した結果から「よく出るポイント」だけに絞って解説しています。
このページは「歌物語」の文学史の知識がほぼカバーできるように作っています。知識整理にお役立てください。
・2022年 京都産業大学
・2021年 学習院大学
ほか多数
「歌物語」一覧 基礎知識まとめ
まずは「歌物語」の基礎知識を整理します。
作品名 | 作者 | 時代 | ジャンル | 内容 | ポイント |
伊勢物語 | ? | 『源氏物語』以前の平安時代 | 歌物語 | 在原業平と思われる男の恋愛遍歴 | 「在原業平を主人公とする作品」を聞く問題でも頻出 |
大和物語 | ? | 『源氏物語』以前の平安時代 | 歌物語 | (和歌を中心とした短編集) | ー |
平中物語 | ? | 『源氏物語』以前の平安時代 | 歌物語 | (平中という男の恋愛遍歴) | ー |
覚えるべきポイントは下のポイントの章で確認していきます。
その前に「歌物語」とは何か?という概要を説明しておきますね。
歌物語とは?
「歌物語」はジャンルの名前で、和歌をメインとする物語のことです。
平安時代は和歌のやりとりが盛んで、感動を表現したり、気持ちを伝えたりするために、カジュアルに和歌を詠んでいました。
奈良時代の『万葉集』は和歌だけが収録された「和歌集」です。
時代が進み平安時代に入ると、和歌の前後に「その和歌をどういう状況で詠んだのか」という説明がつくようになり、物語っぽくなっていきます。(説明のことを「詞書:ことばがき」と言います)
和歌そのものを楽しむのもいいのですが、なぜその和歌を詠むことになったのか?もわかると味わい深くなりますね。
下のポイント「『伊勢物語』の主人公は在原業平がモデルだと考えられている」の章に具体例を書いていますので、参照してくださいね。
「歌物語」よく出るポイント
「歌物語」関連で覚えておくべきポイントは以下の3ポイント。むしろこの3ポイントしか出ないと言っても過言ではありません。
- 「歌物語」に分類されるのは『伊勢物語』『大和物語』『平中物語』の3作品
- 成立年代:「歌物語」は『源氏物語』以前の平安時代に成立した作品
- 『伊勢物語』の主人公は在原業平がモデルだと考えられている
一つずつ確認していきましょう。
歌物語の代表作3つ 伊勢物語・大和物語・平中物語
歌物語はジャンルの問題がよく出題されます。
「歌物語」:「伊勢」「大和」「平中」と反射で言えるくらいにしておきましょう。
『伊勢物語』と同じジャンルの作品は?などの問題が大・頻出です!
似たものに「作り物語」がありますので、区別して覚えておきましょうね。
※詳しくは【作り物語】の代表作3つまとめを参照してください。
「歌物語」は『源氏物語』以前の平安時代に成立した作品
「歌物語」の成立年代は『源氏物語』以前の平安時代です。
成立年代に関わる問題もよく出題されていますので、『源氏物語』以前というところまで覚えておきましょう。
※『源氏物語』以前の作品をまとめたページを作っていますので、詳細は【年代攻略】『源氏物語』以前の作品まとめを参照してください。
『伊勢物語』の主人公は在原業平がモデルだと考えられている
歌物語の一つ、『伊勢物語』の主人公は「男」としか書かれず、名前が出るわけではないのですが、モデルは「在原業平」だと言われています。
在原業平は六歌仙の一人でもありますので、関連事項として覚えておきましょう。
※六歌仙については【古今和歌集】の撰者・時代・特徴は?の六歌仙の項を参照してください。
『伊勢物語』の一部分「東下り」から、歌物語の特徴を確認してみましょう。
まずは東下りに出てくる「和歌」を紹介します。
(口語訳)
唐衣は着ているとなれる、私にはその、なれ親しんできた愛しい妻が京にいるので、はるばるやってきた旅をしみじみ物悲しく思うのだよ
和歌だけでも十分、愛する妻と離れてしまったつらさが伝わってきます。
(さらに、掛詞:「なれ」「つま」「はるばる」「きぬる」や、枕詞、序詞、縁語など、たった31文字の中に修辞法=和歌の技がぎっしり)
次に「物語部分(詞書)」を見てみましょう。
ある男が都から田舎に引っ越ししようとして、徒歩で旅をしています。
(当時は車も電車も無いので仕方がない)
歩いている途中に「かきつばた」という花を見つけます。
「かきつばた」を見つけた旅仲間が男(たぶん在原業平)に一言。
「かきつばた、といふ五文字を句のかみに据ゑて、旅の心をよめ」
訳:「かきつばた」という5文字を句の頭において、旅の気持ちを詠んでください
このお題に答えて男(たぶん在原業平)は和歌を詠みます。
もう一度紹介した和歌を見てみましょう。
きつつなれにし
つましあれば
はるばるきぬる
たびをしぞ思ふ
「五七五七七」の頭の音をつなげて読んでみる(太字)と「かきつはた」になりますよね。
旅仲間のお題は
・句の頭に「かきつばた」をいれること
・旅の心情を詠むこと
だったので、どちらの条件もクリアしています。
たしかに状況説明があった方が分かりやすい気がする…!
そうだね。
和歌単体でも楽しめるけれど「句の頭をつなげるとかきつばたになる!」って発見できたり、「そもそもなんでかきつばた?」という疑問が解消したりするね。
歌物語は、あくまで和歌がメイン・物語は状況説明です。
でも、前後のストーリーがあった方が状況がよく伝わりますね。
さらに時代が下ると、和歌よりも説明(物語)が長くなっていき、『源氏物語』のような作り物語へと発展していきます。
「歌物語」はココが出る!まとめ
「歌物語」で覚えるべきポイントをまとめます。
チェックポイント
・「歌物語」に分類されるのは『伊勢物語』『大和物語』『平中物語』
・『伊勢物語』『大和物語』『平中物語』は『源氏物語』以前の平安時代に成立
・『伊勢物語』の主人公は在原業平がモデルだと考えられている
「歌物語」の基礎知識の確認はここまで。
お疲れさまでした!
練習問題も準備していますので、知識が定着しているか確認してみましょう↓
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