【更級日記】作者・成立年代・あらすじは？～国語予備校講師の文学史解説～

日本文学作品はたくさんありますが、大学入試問題で出題される作品や問題には偏りがあります。国語予備校講師が、過去問5年分以上分析した結果から「よく出るポイント」だけに絞って解説しています。

このページは『更級日記』の文学史の知識がほぼカバーできるように作っています。知識整理にお役立てください。

『更級日記』の基礎知識　作者・成立年代・ジャンルは?

まずは『更級日記』(さらしなにっき)の基礎知識を整理します。

作品名	作者	時代	ジャンル	内容	ポイント
更級日記	菅原孝標女	『源氏物語』以降成立の平安時代	日記	自分の少女時代を振り返る日記	『蜻蛉日記』と区別する／『浜松中納言物語』と『夜半の寝覚め』の作者とも

では、覚えるポイントをひとつずつ確認していきましょう。

作者：菅原孝標女

『更級日記』の作者は菅原孝標女(すがわらたかすえのむすめ)です。

『更級日記』が問題になる場合は、作者名と作品名を結びつける問題がよく出題されます。なぜかというと…似たものがあってややこしいから！

どちらも『〇〇日記』、「〇原」、「母or女」など、なんとなく共通点が多い。

※『蜻蛉日記』の詳細は「【蜻蛉日記】作者・成立年代・あらすじは？」を参照してください。

よく問題になっていますので、しっかり覚えておきましょう。覚え方は下の「ポイント」で紹介します。

成立年代：『源氏物語』以降の平安時代

『更級日記』の成立年代は『源氏物語』以降の平安時代です。

成立年代が問題になるときは、『源氏物語』との前後関係で聞かれることが多いです。

『更級日記』には、作者の菅原孝標女が子供のときに「『源氏物語』を読みたい！」と仏様に祈り倒した結果、『源氏物語』54巻(全巻)を手に入れることができた！というエピソードが収録されています。
(教科書にも載っているので、読んだことがある人も多いかも？)

『源氏物語』を読みたいと思っていたというエピソードを知っていれば、成立順は『源氏物語』→『更級日記』の順だとわかりますね。

ジャンル：日記

『更級日記』のジャンルは「日記」です。

タイトルに「日記」と入っているので、ジャンルが問題になることはありません。

内容：自分の少女時代を振り返る日記

『更級日記』は筆者が自分の少女時代を振り返る日記です。

「日記」というと、その日にあったことをその日のうちに、少なくとも近いうちに書くイメージありますよね。

でも、『更級日記』は違います。
50歳くらいのときに、自分の少女時代から今までを振り返って書くという形になっています。日記というよりもむしろ「自分史」とか「自伝」の方が近いかもしれませんね。

作者の菅原孝標女は、小さいころから物語が大好きで文学少女だったそう。ただ、物語に夢中になるあまり、やらなければならないこと(仏道修行)をサボってしまった少女時代を50代になってから反省している、といったエピソードがところどころに挟まれています。

「日記」という言葉に惑わされず、この時間のずれがわかっておくと読解問題も解きやすくなります。

ポイント

『更級日記』関連の問題でポイントになるのは、ここまで紹介してきた基礎知識に加えてあと2つ！

『蜻蛉日記』と『更級日記』を混同しない

作者を紹介したときにも触れましたが、『蜻蛉日記』と『更級日記』は共通点が多く混同しがちです。ただし、間違えやすいということは問題にもなりやすいということ！

源氏以前	源氏以降	前→後
蜻蛉日記	更級日記	かげろう→さらしな
藤原道綱母	菅原孝標女	母→女(むすめ)

この2作品は成立順も大切なので、

と覚えておくといろんな場面で使えるはずです。

菅原孝標女が書いたとされる作品に『浜松中納言物語』と『夜半の寝覚』がある

菅原孝標女は文学少女だったので、自分でも作品を書いていたようです。
現在、菅原孝標女の作品ではないかと言われているのが『浜松中納言物語』と『夜半の寝覚』。どちらも、文学史の問題としてはマニアックですが、ときどき出題されているので、余力がある人は頭の片隅にとどめておいてください。

『更級日記』はココが出る！まとめ

『更級日記』で覚えるべきポイントをまとめます。

『更級日記』の基礎知識の確認はここまで。
お疲れさまでした！

練習問題も準備していますので、知識が定着しているか確認してみましょう↓