【年代攻略】『源氏物語』以前の作品まとめ~国語予備校講師の文学史解説~

★基礎知識編
当記事では大学受験の文学史対策をしたい人に向けて
・『源氏物語』以前に成立した作品
・文学史対策のために覚えるポイント
を解説します!
ことのは
ことのは

こんにちは!
国語予備校講師のことのはです!

日本文学作品はたくさんありますが、大学入試問題で出題される作品や問題には偏りがあります。国語予備校講師が、過去問5年分以上分析した結果からよく出るポイントだけに絞って解説しています。

このページは『源氏物語』以前に成立した作品の年代順の知識がほぼカバーできるように作っています。知識整理にお役立てください。

【『源氏物語』以前に成立した作品】に関する問題の出題実績例(一例)
・2021年 早稲田大学
・2018年 学習院大学
ほか多数
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『源氏物語』以前に成立した作品

大学受験文学史の問題において、『源氏物語』以前か?以後か?という問題が大・頻出です。

『源氏物語』以前に成立した作品の方が少ないので「以前」の方を整理しておいて、残りはすべて以後だ!と覚えておくと便利です。

基準は約・西暦1000年

まずは『源氏物語』と同時期に成立した作品を紹介します。

作品名作者時代ジャンル内容ポイント
和泉式部日記和泉式部平安時代
(約1000年)
日記和泉式部の身分違いの恋の記録
枕草子清少納言平安時代
(約1000年)
随筆清少納言が中宮定子に仕える中で感じたこと「をかし」の文学と評価される
源氏物語紫式部平安時代
(約1000年)
作り物語光源氏の恋愛遍歴「もののあはれ」の文学と評価される
紫式部日記紫式部平安時代
(約1000年)
日記紫式部が藤原道長の娘・彰子に仕える中で感じたこと

数年レベルのずれはありますが、大学受験文学史においては、

和泉式部・清少納言・紫式部はだいたい1000年を生きた人

だという基準を持っておきましょう。

ちょうどこの頃は目立った戦いがない平和な時代で、文化・文学が盛んで特に女流文学が流行しました。
日本史では、藤原道長が権力を持った時代です。

『源氏物語』と同時代に成立した作品は?という問題に対応するのはもちろん、『和泉式部日記』以前に成立した作品は?などの派生問題にも対応できるようにしておきましょう。

『枕草子』の詳細はこちら→【枕草子】作者・成立年代・あらすじは?
「紫式部」の詳細はこちら→【紫式部】の作品・成立年代・あらすじは?

よく出題される『源氏物語』以前の作品 10選

次に、『源氏物語』以前に成立した作品としてよく出題されている10作品を紹介します。

作品名作者時代ジャンル内容ポイント
万葉集大伴家持
(諸説あり)
奈良時代
(最古の和歌集)
和歌集
(勅撰和歌集ではない)
さまざまな身分の人の和歌を収録/歌風は「ますらをぶり」と形容される代表歌人は額田王・天智天皇・柿本人麻呂・山部赤人
伊勢物語?『源氏物語』以前の平安時代歌物語在原業平と思われる男の恋愛遍歴「在原業平を主人公とする作品」を聞く問題でも頻出
大和物語?『源氏物語』以前の平安時代歌物語(和歌を中心とした短編集)
平中物語?『源氏物語』以前の平安時代歌物語(平中という男の恋愛遍歴)
竹取物語?『源氏物語』以前の平安時代作り物語かぐや姫のはなし最古の物語
うつほ物語
(宇津保物語)
?『源氏物語』以前の平安時代作り物語(全20巻の長編小説)
落窪物語?『源氏物語』以前の平安時代作り物語継子いじめ同類型に
・住吉物語
・鉢かづき
古今和歌集
(古今集)
紀貫之
紀友則
凡河内躬恒
壬生忠岑
天皇:醍醐天皇
平安初期:『源氏物語』以前の平安時代/最初の勅撰和歌集勅撰和歌集「たおやめぶり」と形容される仮名序の作者は紀貫之/代表歌人は六歌仙+α
土佐日記紀貫之『源氏物語』以前の平安時代日記
紀行
土佐~京までの旅日記/子を亡くした悲しみ『古今和歌集』との関連/書き出しが有名
(男もすなる~)
蜻蛉日記藤原道綱母『源氏物語』以前の平安時代日記夫・兼家の浮気を嘆く日記『更級日記』と区別する

年代に絞って、ポイントを確認していきましょう。

万葉集

『万葉集』の成立は奈良時代なので、『源氏物語』以前に成立したのは、当然と言えば当然ですね。

『万葉集』の詳細はこちら→【万葉集】の撰者・時代・代表歌人は?

歌物語・作り物語

歌物語:『伊勢物語』『大和物語』『平中物語』

作り物語:『竹取物語』『うつほ物語』『落窪物語』

『源氏物語』

歌物語と作り物語の6作品が下敷きになり、それぞれの良いところ取りをした集大成が『源氏物語』です。

この知識があれば『源氏物語』以前に成立したと判断できますね。

「歌物語」の詳細はこちら→【歌物語】の代表作3つまとめ
「作り物語」の詳細はこちら→【作り物語】の代表作3つまとめ

古今和歌集

勅撰和歌集の成立順を覚えるために、『古今和歌集』の成立は平安初期(約900年)、『新古今和歌集』は鎌倉初期であることは知っておくと便利です。

『古今和歌集』は『源氏物語』以前に成立した作品です。

『古今和歌集』の詳細はこちら→【古今和歌集】の撰者・時代・特徴は?
勅撰和歌集の成立順についてはこちら→【勅撰和歌集】一覧!順番・覚え方は?

土佐日記

土佐日記の作者は「紀貫之」です。

紀貫之は『古今和歌集』の撰者の一人でもあります。
『古今和歌集』と同時代に成立しているはず、と考えるとまとめて覚えられそうですね。

『土佐日記』の詳細はこちら→【土佐日記】作者・成立年代・あらすじは?

蜻蛉日記

『蜻蛉日記』も『源氏物語』以前に成立した作品です。

『蜻蛉日記』は夫:藤原兼家の浮気を嘆く日記でした。
この藤原兼家という男、実は藤原道長の父です。
(ただし、道長は兼家の本妻・時姫という人の子供なので、道綱母の子供ではありません)

道長は紫式部と同時代の1000年を生きた人です。その親世代の話であれば、『源氏物語』以前に成立していると推測できます。

『蜻蛉日記』の詳細はこちら→【蜻蛉日記】作者・成立年代・あらすじは?

ときどき出題される『源氏物語』以前に成立した作品

最後に、頻出という訳ではないけれど、ときどき出題されている作品を紹介しておきます。
ここまで覚えられれば対策はカンペキ!

作品名作者時代ジャンル内容ポイント
古事記稗田阿礼・太安麻呂奈良時代歴史書日本の現存最古の書物
日本書紀舎人親王奈良時代歴史書
風土記奈良時代(地誌)完本は出雲国風土記のみ
懐風藻(淡海三船)奈良時代漢詩集日本現存最古の漢詩集
日本霊異記『源氏物語』以前の平安時代説話集

日本史を勉強している場合とそうでない場合で差がついてしまう問題です。
頻出という訳ではないので、作品名だけでも頭の片隅に置いておきましょう。

古事記・日本書紀

日本の現存最古の書物『古事記』は奈良時代に成立しています。
それまではバラバラに存在していた日本の歴史の記録を、稗田阿礼(ひえだのあれ)と太安麻呂(おおやすのまろ)が一つの形にまとめたものです。

その約10年後に、(『古事記』に納得できなかったのか)、同じく日本の歴史を扱った、似たような内容の作品を作り直しています。それが『日本書紀』です。
舎人親王(とねりしんのう)らが作ったと言われています。

風土記

『風土記』(ふどき)は、その土地のことや、そこに伝わる伝承などがまとめられたものです。全国各地の『風土記』が作られたようですが、完全体で残っているのは『出雲国風土記』(現在の島根県あたりの記録)のものだけです。

懐風藻

『懐風藻』(かいふうそう)は、奈良時代に編纂された「漢詩集」です。

ときどき、日本最古の漢詩集はどれか、という問題が出ています。

日本霊異記

『日本霊異記』は平安時代の初期に成立した「説話集」です。

『日本霊異記』・説話集の詳細はこちら→【説話集】代表作一覧!特徴は?

【『源氏物語』以前に成立した作品】はココが出る!まとめ

【『源氏物語』以前に成立した作品】で覚えるべきポイントをまとめます。

チェックポイント

・『枕草子』は平安時代(約1000年)に成立

・紫式部が書いた『源氏物語』『紫式部日記』は平安時代(約1000年)に成立

・『和泉式部日記』は平安時代(約1000年)に成立

・『万葉集』は奈良時代に成立

・『伊勢物語』『大和物語』『平中物語』は『源氏物語』以前の平安時代に成立

・『竹取物語』『うつほ物語』『落窪物語』は『源氏物語』以前の平安時代に成立

・『土佐日記』は『源氏物語』以前の平安時代に成立

・『古今和歌集』は『源氏物語』以前の平安時代に成立

・『蜻蛉日記』は『源氏物語』以前の平安時代に成立

・『古事記』『日本書紀』『風土記』『懐風藻』は奈良時代に成立

・『日本霊異記』の成立年代は源氏物語以前の平安時代

【『源氏物語』以前に成立した作品】の基礎知識の確認はここまで。
お疲れさまでした!

練習問題も準備していますので、知識が定着しているか確認してみましょう↓

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