【平安時代】に成立した作品まとめ~国語予備校講師の文学史解説~

★基礎知識編
当記事では大学受験の文学史対策をしたい人に向けて
・平安時代に成立した作品の基礎知識
・文学史対策のために覚えるポイント
を解説します!
ことのは
ことのは

こんにちは!
国語予備校講師のことのはです!

日本文学作品はたくさんありますが、大学入試問題で出題される作品や問題には偏りがあります。国語予備校講師が、過去問5年分以上分析した結果からよく出るポイントだけに絞って解説しています。

このページは「平安時代に成立した作品」の文学史の知識がほぼカバーできるように作っています。知識整理にお役立てください。

【平安時代に成立した作品】に関する問題の出題実績例
・2022年 龍谷大学
・2020年 早稲田大学
・2020年 九州大学
ほか
スポンサーリンク

【平安時代に成立した作品】まとめ

頻出作品はそれぞれのページでまとめているので参照してください。

当ページでは、上記テーマに収まりきらなかった作品を紹介します。

『源氏物語』以降に成立した作り物語 3作品

『源氏物語』以降の平安時代に成立した作り物語として、『狭衣物語』『堤中納言物語』『とりかへばや物語』の3作品紹介します。

作品名作者時代ジャンル内容ポイント
狭衣物語『源氏物語』以降の平安時代作り物語狭衣大将の恋愛遍歴『源氏物語』の影響を受ける
とりかへばや物語『源氏物語』以降の平安時代作り物語性別を入れ替えて生活する姉と弟の話
堤中納言物語『源氏物語』以降の平安時代作り物語短編集『虫めづる姫君』が有名

作り物語とは「虚構の物語」つまり現代でいう小説のことです。

『源氏物語』以前に成立した作り物語は別ページで紹介しています。
【年代攻略】『源氏物語』以前の作品まとめ
『源氏物語』をきっかけに、作り物語がどんどん作られるようになります。

狭衣物語

『狭衣物語』(さごろもものがたり)は、本命の女性への恋が報われなかった狭衣大将という人が、本命の女性への恋が報われず、いろんな女性と恋愛する話です。

なんか聞いたことあるストーリーかも?

ことのは
ことのは

そうだね、『源氏物語』とほぼ同じ。

『源氏物語』は、光源氏という貴公子が本命の女性(藤壺)への恋が実らず、いろんな女性と恋愛する話でした。
『狭衣物語』は、『源氏物語』の影響を多大に受けています。

とりかへばや物語

『とりかへばや物語』は男っぽい姉と、女っぽい弟が、男女逆転生活を送る物語です。

姉は男として宮中に仕え、弟は女として生活を送るうちに、お互いに結婚の話が出てきて…どうする?!的なドタバタコメディです。

『ざ・ちぇんじ』という小説(のちにマンガ化)は『とりかへばや物語』を現代風にアレンジした作品です。

【古典文法対策】
とりかへばやの「ばや」は、
未然形+ばや→~したい
と訳す願望の副助詞です。

男女を「とりかえたい」物語の意味ですね。

堤中納言物語

『堤中納言物語』(つつみちゅうなごんものがたり)は10個の作品が入っている短編集です。
有名なのは『虫愛づる姫君』という作品。

虫が大好きな高貴なお姫様がいて、虫を飼ったり、さなぎを集めて育てたりして周囲の女房(=お手伝い係)をビビらせていました。せっかくの求婚も断ってしまって…という当時の基準からすると、ちょっと変わったお姫様の話です。


紹介した3作品は、全て作者が不明です。
『源氏物語』以降に成立した「作り物語」という2ポイントを押さえておきましょう。

・『狭衣物語』『とりかげばや物語』『堤中納言物語』は『源氏物語』以降の平安時代に成立
・『狭衣物語』『とりかげばや物語』『堤中納言物語』のジャンルは作り物語
・『とりかへばや物語』は男女逆転物語

和漢朗詠集

作品名作者時代ジャンル内容ポイント
和漢朗詠集藤原公任平安時代
(約1000年)
歌集文化芸術の天才が集めた歌集

『和漢朗詠集』(わかんろうえいしゅう)は、藤原公任(ふじわらきんとう)が選んだ歌集です。”朗詠”とは、声に出して歌を読むこと。この作品は、言うなれば”声に出して読みたい歌集”です。

藤原公任は作文(漢文)、和歌、管弦(楽器)そして書などの文化・芸術の才に恵まれた人でした。(詳しくは『大鏡』三船の才で検索!)
当時の芸術の名手が「良い」とした和歌を集めた作品です。

また、藤原公任は、藤原道長と同時代の人です。大学受験文学史の基準となる約1000年(和泉式部・清少納言・紫式部)の人だとイメージを持っておきましょう。

・『和漢朗詠集』の作者は藤原公任
・『和漢朗詠集』の成立は平安時代(約1000年)
・『和漢朗詠集』のジャンルは歌集

梁塵秘抄

作品名作者時代ジャンル内容ポイント
梁塵秘抄後白河法皇平安時代末期歌謡集「今様」を集める

『梁塵秘抄』(梁塵秘抄)は、後白河(ごしらかわ)法皇が編集した歌謡集です。
テキストによっては、「後白河天皇」「後白河院」と書いてある場合もありますが、全て同じ人です。
(ちなみに「院」「法皇」は、元・天皇だった人のこと)

後白河法皇は、どうやら五七五七七の和歌が得意ではなかったようで(ウワサです)、庶民の流行だった「今様」という、和歌とは違ったスタイルの歌がお気に入りだったようです。やり過ぎて喉を痛めたことが二度もあったらしい。

この「今様」が収められたのが『梁塵秘抄』です。

後白河法皇が生きたのは、平安時代末期~鎌倉時代にかけてです。
日本史の知識と照らし合わせると、平家が台頭してきて、源平合戦が起こり、最終的に源氏が鎌倉幕府を起こした時代です。

武士が力を持つ時代でありながら、様々な策を使い、朝廷の権力を保つために上手く立ち回ります。
日本史を勉強していれば、後白河法皇は「院政」でもおなじみですね。(※文学史では出ません)

・『梁塵秘抄』の作者は後白河法皇
・『梁塵秘抄』の成立は平安時代末期
・『梁塵秘抄』は「今様」を収録した歌謡集

歌論

「歌論」とは、和歌の批評をした文章です。
どういう和歌が良くて、和歌とはどういったものなのかについて、筆者の考えを記した評論文です。

作品名作者時代ジャンル内容ポイント
俊頼髄脳源俊頼平安時代末期歌論和歌とは何かを述べる
袋草紙(藤原清輔)平安時代末期歌論和歌とは何かを述べる

ただ、今回挙げた『俊頼髄脳』『袋草紙』は「平安時代後期」成立の「歌論」だと覚えておくだけでOKです。

内容まで問われることはありません。

・『俊頼髄脳』『袋草紙』は平安時代後期成立の歌論

【平安時代に成立した作品】はココが出る!まとめ

【平安時代に成立した作品】で覚えるべきポイントをまとめます。

チェックポイント

・『狭衣物語』『とりかげばや物語』『堤中納言物語』は『源氏物語』以降の平安時代に成立

・『狭衣物語』『とりかげばや物語』『堤中納言物語』のジャンルは作り物語

・『とりかへばや物語』は男女逆転物語

・『和漢朗詠集』の作者は藤原公任

・『和漢朗詠集』の成立は平安時代(約1000年)

・『和漢朗詠集』のジャンルは歌集

・『梁塵秘抄』の作者は後白河法皇

・『梁塵秘抄』の成立は平安時代末期

・『梁塵秘抄』は「今様」を収録した歌謡集

・『俊頼髄脳』『袋草紙』は平安時代後期成立の歌論

【平安時代に成立した作品】の基礎知識の確認はここまで。
お疲れさまでした!

練習問題も準備していますので、知識が定着しているか確認してみましょう↓

コメント

タイトルとURLをコピーしました