・「軍記物語」の基礎知識(作品・成立年代・特徴)
・文学史対策のために覚えるポイント
を解説します!
こんにちは!
国語予備校講師のことのはです!
日本文学作品はたくさんありますが、大学入試問題で出題される作品や問題には偏りがあります。国語予備校講師が、過去問5年分以上分析した結果から「よく出るポイント」だけに絞って解説しています。
このページは「軍記物語」の文学史の知識がほぼカバーできるように作っています。知識整理にお役立てください。
・2021年 駒澤大学
・2018年 三重大学
・2017年 早稲田大学
ほか
「軍記物語」一覧 基礎知識まとめ
まずは「軍記物語」の基礎知識を一覧表で整理します。
作品名 | 作者 | 時代 | ジャンル | 内容(題材の戦) | ポイント |
将門記 | – | 鎌倉時代 | 軍記物語 | 平将門の乱 | – |
保元物語 | – | 鎌倉時代 | 軍記物語 | 保元の乱 | – |
平治物語 | – | 鎌倉時代 | 軍記物語 | 平治の乱 | – |
平家物語 | – | 鎌倉時代 | 軍記物語 | 平家の栄華と没落 | 琵琶法師の語りが有名 |
源平盛衰記 | – | 鎌倉時代 | 軍記物語 | 平家物語の異本 | – |
承久記 | – | 鎌倉時代 | 軍記物語 | 承久の乱 | – |
太平記 | – | 室町時代 | 軍記物語 | 建武の新政 南北朝の動乱 | – |
曽我物語 | – | 室町時代 | 軍記物語 | 曽我兄弟の敵討ち | – |
義経記 | – | 室町時代 | 軍記物語 | 源義経と弟子たちについて | – |
覚えるべきポイントは下のポイントの章で確認していきます。
その前に「軍記物語」とは何か?という概要を説明しておきますね。
軍記物語とは?
軍記物語は歴史上の「戦い」を描いたものです。
どんな戦いが起こったか、誰が戦ったかなどの記録の側面もありますが、登場人物がどういう気持ちで戦いに挑んだか、どんな死に方をしたのかなど「物語」の側面もあります。
歴史の出来事を題材にしているという点では「歴史物語」と同じなのですが、軍記物語は扱う題材が「戦い」に特化しています。
ただ、題材にしただけなので、史実そのものではありません。今で言うと大河ドラマのようなものでしょうか。
実際にあった出来事を基にして、読んでいておもしろいくらいのエンタメ性を出したものです。
もちろん100%ウソではないでしょうが、かなり「盛っている」部分はあるはずです。
「軍記物語」よく出るポイント
「軍記物語」関連で覚えておくべきポイントは以下の4ポイント。
- 作品名を見て「軍記物語」だとジャンルを判別する
- 成立年代が「鎌倉時代」と「室町時代」どちらなのかを区別する
- あらすじ(題材になった戦い)を知っておく
- 『平家物語』の特徴を知っておく(琵琶法師・和漢混交文・書き出し)
一つずつ確認していきましょう。
ジャンル:軍記物語
「軍記物語」関連の問題では、ジャンルを問う問題がよく出ます。
少し作品数は多いですが、上の表に挙げている作品たち、
が出てきたら、「軍記物語」だ!と言えるようになっておきましょう。
成立年代が「鎌倉時代」と「室町時代」どちらなのかを区別する
「武士」っていつの時代からいると思う?
うーん…戦国時代?
あ!源氏と平氏も武士かな?
そうだね。
厳密なはじまりは諸説あるんだけど、歴史の表舞台に出てくるのは平安時代終わりの平家一族からだね。
軍記物語は鎌倉時代から室町時代の間に成立した作品が多いです。
理由はずばり、軍記物語の主人公が「武士」だから!
武士が日本の歴史に出てくるのは平安時代末期のことなので、平安時代末期以前には軍記物語は成立するわけがないんです。
戦国時代を越えて江戸時代になると平和な世の中になり、戦いが減りますので、やはり軍記物語は減っていきます。
「軍記物語」の問題は、成立年代を問う問題もよく出ますので、それぞれの作品を「鎌倉時代」成立か、「室町時代」成立なのかを分けて覚えておきましょう。
『太平記』・『曽我物語』・『義経記』は室町時代、それ以外は鎌倉時代と覚えておくとよいでしょう。
あらすじ(題材になった戦い)を知っておく
軍記物語はある戦いに焦点を当てて描いた作品です。
問題では「〇〇の戦いを題材にした作品はどれか」という問題もよく出ています。
どうしても日本史選択の方が有利になってしまう問題ではありますが、表に目を通しておいてください。
とはいえ、『平治物語』→平治の乱、『承久記』→承久の乱、などそのままの作品は問題になりません。
・『太平記』:建武の新政と南北朝の動乱
・『曽我物語』:兄弟が敵討ちをする
この3つがよく出題されています。
『平家物語』の特徴を知っておく
『平家物語』は作品そのものの特徴も問題になります。
知っておくべきポイントが3つありますので、紹介しておきます。
- 琵琶法師の弾き語り
- 和漢混交文で書かれる
- 書き出し(祇園精舎の鐘の声…)が有名
一つずつ見ていきましょう。
琵琶法師の弾き語り
『平家物語』は最初から今のように書物の形だったわけではありません。
当時は「琵琶法師」という職業の人が、源平合戦での戦いの様子を「琵琶」という楽器を弾きながら、道行く人に語って聞かせていました。(ストリートミュージシャンみたいなもの?)
聴衆を惹きつけるために「起承転結がしっかりしている・わかりやすい・のめり込んでしまう展開」を語らなければなりません。人間ドラマが多数収録されていて、登場人物も魅力的。
何回も語られ、洗練された物語になり、集めて文字化したものが『平家物語』なのです。
和漢混交文で書かれる
「和漢混交文」とは、日本語だけど、漢文調の耳なじみがいいリズムで書かれる文章のことです。
「和(=日本)」と「漢(=中国)」が混ざった文、と考えてください。
『平家物語』はもともとは「語って聞かせる」作品なので、言いやすい・聞きやすいリズム(七五調)に自然となっていたようです。
書き出しが有名
『平家物語』は書き出しが有名です。
和漢混交文を味わえるところでもありますので、引用します。
諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色
盛者必衰の理をあらはす
(…以下略)
声に出して読んでみると、七・五調でリズムがいいですよね!
「軍記物語」はココが出る!まとめ
「軍記物語」で覚えるべきポイントをまとめます。
チェックポイント
・『将門記』『保元物語』『平治物語』『平家物語』『源平盛衰記』『承久記』『太平記』『曽我物語』『義経記』のジャンルは軍記物語
・『将門記』『保元物語』『平治物語』『平家物語』『源平盛衰記』『承久記』の成立年代は鎌倉時代
・『太平記』『曽我物語』『義経記』の成立年代は室町時代
・『平家物語』の内容は平清盛の栄華と没落
・『太平記』の内容は建武の新政と南北朝の動乱
・『曽我物語』の内容は兄弟が敵討ちをする話
・『平家物語』は琵琶法師が弾き語りをした
・『平家物語』は和漢混交文で書かれる
・『平家物語』の書き出しは「祇園精舎の鐘の声…」
「軍記物語」の基礎知識の確認はここまで。
お疲れさまでした!
練習問題も準備していますので、知識が定着しているか確認してみましょう↓
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